【料理の四面体】玉村豊男 

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著者

玉村豊男さん。1945年東京生まれ。東京大学仏文科卒。卒業後、通訳や翻訳者として働く。現在は長野県小県東御市でワイン農園「ヴィラデスト」を営まれています(91年~)。

書籍目次

1、料理のレパートリー

2、ローストビーフの原理

3、天ぷらの分類学

4、刺身という名のサラダ

5、スープとお粥の関係

6、料理の構造ーまたは料理の四面体についてー

解説、 日髙良実さん

内容

・料理の調理法を大胆に切り分け考察しすべては「火、水、油、空気(料理の四面体)」の4つの要素の”割合”で分類できると提言する本です。”火、水、油”は思いつきますが”空気”の要素を入れたことになるほどと思わせられました(なぜ空気が4つ目の要素に入るのか推測してみて下さい)。4つの要素を考えながら調理を考えればマンネリ調理法から脱却できるかもと思わせてくれます。多少なりとも料理をする人なら面白く読める本だと思います。料理法の分類のほかにはソースやドレッシングについても面白い考察が書かれています。

・面白い雑談がいくつも載っています。例えば「「ユッケ」は”肉膾”と書くそうです。つまり肉の膾(なます)でという意味です。日本で”なます”と言えば千切り大根と人参を三杯酢で和えたものを指すが、膾の偏が月(にくづき)であるように、元々は生肉を用いた料理(生肉の千切りに、塩、砂糖、香辛料などを絡める)を指すのである。」とか。日本ではいつの間にか”酢で和えた料理”を”なます”と呼ぶようになったんですね。つい雑学として話したくなるような小ネタです。

・本章「3、天ぷらの分類学」では揚げ方を「素揚げ、粉揚げ、衣揚げ、変わり衣揚げ」と4つに分類することを提案しています。”素揚げ”は素材そのものをそのまま油で揚げたもの、”粉揚げ”は粉をつけて揚げたもの、”衣揚げ”は粉を含む流動物質をつけて揚げたもの、そして”変わり衣揚げ”は衣あげの流動物質にさらに別の個体をつけて揚げたものと定義しています。言われればその通りでスッと頭に入ってくる分類法です。特に衣揚げなんかは◯◯◯の衣揚げと書かれていればどんな揚げ物か分かりやすくて良いですね。

・本章「6、料理の構造ーまたは料理の四面体についてー」の章では「火、水、油、空気」の4成分を頂点とした三次元の三角形を用い調理方法のバリエーションを豆腐を例に説明しています。焼き豆腐、入り豆腐、凍み豆腐、腐乳、豆腐の燻製などなど。

感想 

四面体(火・水・油・空気)を意識し調理法を考えれば、いつもの調理法から抜け出したい人にはきっと役に立ちます。”今日は油の要素を多めにしてみよう”、”空気の要素を入れるためにグリルを使ってみよう”などなど、少しだけ冒険した火の入れ方や油の使い方をするきっかけ作りになります。もちろん読みモノとしても十分面白い内容ですので、食に興味がある人なら誰にでもお勧めしたい本です。